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【遠州七不思議】夜泣き石【えんしゅうななふしぎ】よなきいし

所在地 掛川市日坂
内容

昔、牧の原のほとりに貧しい夫婦が仲睦まじく住んでいた。美しい妻は小石姫と呼ばれ、仏教への信仰も厚く、月に何度か小夜の中山の峠にある久延寺の観音菩薩にお参りし、貧しいながらも三文ずつ供えていた。

 

ある年、夫が所用で京都へ行って幾月も帰らず、小石姫は妊娠10ヶ月のお腹を抱えながら、明日の食事にも困っていた。そこで、家に伝わる赤丸玉の名刀を持ってお金を借りようと、夕暮れの道を町へと急いだ。

 

小夜の中山の峠に差し掛かる頃には日は沈み、久延寺の側を通ってしばらく進むと、道の傍らに大きな丸い石があった。すると、その石の横から一人の凶漢が現れた。

 

小石姫は急いで逃げようとしたが捕まってしまったので、持っていた名刀を鞘から抜き、男へと立ち向かった。しかし、あっさりと刀は奪われ、凶漢によって切り殺されてしまう。

 

凶漢は刀を腰に刺し、更には彼女の着物まで剥ぎ取ろうとした時だった。旅僧が突然現れ、それに驚いた凶漢は急いで逃げてしまった。
この夜からその大石のほとりで子供の泣く声が聞こえるようになった。

 

その夜、久延時では観音菩薩が消えてしまい、困った和尚は翌日にでも村人に頼んで探してもらおうとしていた。しかし、翌朝には観音菩薩は戻っており、その右手には赤子が抱えられているようであった。こうしたことが毎夜続いた。

 

また、山のふもとにある菓子屋では、見慣れない旅僧が毎夜三文ずつ飴を買いに来るようになった。

 

不思議に思った店主がある夜、旅僧の後をつけると、子供の泣き声が聞こえるという石の側まで来た。石からは今夜も泣き声がしていた。すると、旅僧はその大石のあたりで消えたので、店主は恐る恐る石のほうを調べると、そこには女の着物に包まれた赤ん坊がいて、その周りには彼の店の飴の包み紙が落ちていた。

 

菓子屋の店主は赤ん坊を連れて家へと帰ったが、自分たちが生活するだけでも苦しいので、
翌朝、久延寺を訪ねた。寺の和尚に昨日のことを伝え、赤ん坊を見せると、赤ん坊を包んでいた着物から小石姫の子供であると分かった。
また、観音さまが菓子屋へ飴を買い、石の側にいた子供に飴をなめさせたことによってその赤ん坊は生き延びていたのだと思った。

 

このことに縁を感じた菓子屋の店主は赤ん坊を引き取り、育てることにした。
赤ん坊は音八と名付けられ、すくすくと育っていった。

 

音八が成人し、大阪で刀の研磨師をしていると、ある日一人の老人が一本の刀を持ってきて研磨を頼んだ。すると、刀は良いものではあるが、刃先にキズがあったので、理由を聞いてみると、昔、小夜の中山で妊婦を切ったということだった。音八は母の仇と、その刀で老人を切ってしまった。

 

※遠州七不思議は土地によっていろいろな話がある。この話の他に片葉の葦京丸牡丹桜ヶ池のお櫃納め三度栗波の音無間の鐘などがある。

 

参考

『遠州七ふしぎの話』遠州伝説研究協会
『遠州七不思議』石野茂子
『遠州伝説集』遠州タイムス社
 

 

 

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