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「浜名湖といえばウナギ」と言われるほど、ここ浜松はウナギの産地として知られていますが、これは単にウナギ屋さんが多いからとか、ウナギを食べる比率が高いからということだけではありません。昔から、毎日休みなく愛情込めてウナギを育てている養鰻業者さんたちの長い歴史があるからこそ!なのです。
浜名湖でウナギの養殖が始まったのは、約一世紀余り前。以来、シラスウナギと、ウナギを育てるうえでのエサの確保は、苦労の連続だったようです。毎年シラスウナギが不漁のときは、四国や九州、千葉、茨城、更には中国、台湾、韓国などの外国まで足を延ばし、確保に努めました。またウナギの餌となるサバ、イワシなどの鮮魚を確保するため、全国のさかな市場と情報交換を進め、安定仕入を目指してきたのです。こうした年ごとに変化する状況に、その都度対応する養鰻業者たちによる努力の繰り返しが「浜名湖ウナギ」ブランドを確立したといえるでしょう。
シラスウナギ漁の時期は毎年12月~4月。黒潮にのって日本沿岸にたどり着いた天然のシラスウナギが獲られ、水温約30℃に保たれたビニールハウス内で育てられます。毎日欠かさず与える餌は、最初はペースト状の配合飼料が与えられ、次第に魚量の多い餌になります。そして定期的にうなぎをサイズ別の池に選別。出荷前に残留薬検査を行い、検査に通ったものだけが出荷されていきます。
ウナギのさばき方は、関西は腹開きで関東は背開きとよく言われます。東西の境界線は天竜川から浜名湖にかけての地域にあるとされているので、まさにここ浜松は、両方のさばき方で調理したウナギを味わうことができる上でも、ウナギグルメの地と言っても過言ではないのです。
これほどウナギに密着した土地柄ということもあり、浜松には「うなぎ観音(正式名:魚藍観音大菩薩像)」なるものが存在します。場所は南区舞阪町にある乙女園。ここで毎年8月24日に、ウナギの供養行事が開催されているのです。この観音様は、1937(昭和12)年、浜名湖南に位置する「中ノ島」に建立されましたが、1968(昭和43)年に今の地に移転されました。全長3.3m、地上からの高さは8m。観音様の優しい表情からは、養鰻関係者のウナギに対する深い愛情が伺えます。
(うなぎ観音)
浜松のウナギは、ウナギ料理のみならず、さまざまなウナギ文化へと派生していきました。全国的にも知名度の高い「うなぎパイ」は、ウナギのパウダー(ウナギの骨で取った出し汁を粉末にしたもの)をパイ生地に練りこんで焼いた洋菓子で、1961(昭和36)年に開発されました。当初、「一家団欒の際にうなぎパイを囲んで過ごしてほしい」という思いから、「夜のお菓子」というキャッチフレーズが付けられましたが、キャッチフレーズが独り歩きして話題になったといわれています。最近では、うなぎパイが作られる工程を見学できる「うなぎパイファクトリー」が大人気。いまや浜松を代表する観光スポットにもなっています。
さらに、ウナギ残渣をもとに生成した肥料をサツマイモ栽培に利用したり、養鶏に利用した卵がブランド化したりと、新たなうなぎ関連の商品開発が進んでいます。今後も、新たな「うなぎブランド」がぞくぞく登場するはずです。どうぞお楽しみに!
2012年3月投稿