旧王子製紙製品倉庫きゅうおうじせいしせいひんそうこ
郵便番号 | 437-0605 |
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所在地 | 浜松市天竜区春野町気田380-2 |
旧王子製紙製品倉庫とは
王子製紙の前身である製紙会社によって建設された、日本初の木材パルプ工場の製品倉庫。春野中学校の敷地内に今でも残っている。
1873(明治6)年、日本で最初の洋紙製造会社である抄紙(しょうし)会社が設立、翌年に製紙会社と社名を改めている。当時、綿や麻の古い布を原料として紙の製造を行っていたが、技術の進んだ欧米では木材パルプが原料に使われるようになっていた。
欧米での技術習得後、1889(明治22)年に日本で初めての木材パルプ工場が気田(けた)(現:天竜区春野町気田)に建設された。気田が選ばれた理由としては、原料となるモミやツガの原生林があったことや、材料や製品の運搬に便利な気田川が近くにあったこと、そして、その気田川の水力を活用できたことなどが挙げられる。
1910(明治43)年に苫小牧工場が建設されるまで、気田工場は王子製紙の主力であり、最盛期には300名以上もの従業員がいたが、原木をほとんど伐採し尽くしてしまったため、1923(大正12)年に閉鎖となった。
工場閉鎖後、水路と工場敷地の一部は気多村に寄付され、1棟1棟と失われていった。そんな中、この製品倉庫はほぼ完全な姿で残され、その後、学校の講堂や図書室、農業協同組合の事務所などを経て、1999(平成11)年から木材パルプ資料館として公開されていた。しかし、それも2011(平成23)年3月をもって閉鎖された。
製品倉庫前には「木材パルプ発祥之地碑」が建てられている。
建物の特徴
1889(明治22)年に建てられたこの製品倉庫は、床面積166m2(50坪)、幅約18.2m、奥行約9.1mの平屋建て、桟瓦※葺の寄棟造※。外壁は山間地の激しい気候の変化から製品を守るため、気田で焼かれた煉瓦を使用し、内部に10cm程度の空気層を挟んで木造の土壁を設けた二重壁となっている。玄関前にはポーチが設けられ、壁には上げ下げ窓が並んでおり、洋風のデザインが建具や額縁に感じられる。また、外壁には煉瓦の太い控え柱が装飾的に施されている。
室内はひとつの開けた空間となっており、格子状の天井が張られている。現在は耐震補強が施され、春野中学校の窓口で受付を済ませれば内部見学も可能。
和風と洋風の混在するこの建物は、県内の近代建築の歴史を知る上でも重要な役割をしており、1977(昭和52)年に静岡県の文化財に指定されている。
※桟瓦(さんかわら)/断面が波形をした瓦
寄棟造(よせむねづくり)/四方向へと広がる形状の屋根をもつ建物
問い合わせ先
浜松市春野文化センター TEL053-989-0200
関連項目
参考
『静岡県の歴史的建造物・歴史的町並み』(静岡県都市住宅部)
『週刊神社紀行 秋葉神社』(学習研究社)
『昔に出会う景観紀行』(浜松観光コンベンションビューロー)
『ふるさと静岡県文化財写真集』(静岡県教育委員会)
『三遠南信産業遺産』(春夏秋冬叢書)
『静岡県の近代化遺産』(静岡県教育委員会文化課)
『静岡県のすごい産業遺産Ⅰ』(静岡県文化観光部文化政策課)
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