浜松の方言はままつのほうげん
方言と生活
浜松の方言といっても地域によって大きく違い、農山村には草木の生育に関する方言が、漁村には風や潮の状態を表す方言が多いなどというように、方言には人々の生活が反映している。また、その境界は地形によって区切られることが多く、人々の往来が難しかった場所ではその地域独自の方言が生まれ、川や湖などに隔てられた土地では対岸地域との方言の差がはっきりしているなどといったことがみられる。
現在ではテレビなどの普及によって共通語化が進んでおり、数多くの方言が失われつつあるが、昔から受け継がれている庶民の日常や感情をうたった民謡やわらべ歌には、その当時、自然に使われていた方言が残っていることが多い。
旧浜松市周辺の方言
大きな特徴として、標準語と同じ表記だがアクセントが独特ということが挙げられる。「高い・安い・早い・白い」などの三拍形容詞のアクセントは、標準語では2番目の文字に付くのに対し、旧浜松地方では1番目の文字に付く。「起きる・降りる・食べる」などといった三拍一般動詞にも同様の方言が見られるが、こちらは富士川以西で一般的に用いられており、三拍形容詞に関して旧浜松地方独特なもので、全国的にも珍しい特徴。
また、この地方の代表的な方言の一つに「~ラ、ダラ」という推量表現がある。「~ズラ」も同様の意味を持つが、最近ではあまり聞かれなくなってしまった。「~ラ」は「降るラ・高いラ」などというように用言に直接付き、「~ダラ」は「雨ダラ・そうダラ」というような体言に付く場合と、「降るダラ・高いダラ」と用言に直接付き、用言を体言化している場合がある。このように、「~ラ、ダラ」は使い方が少々複雑で、他地方の使い慣れない人には難しく感じられる。
他にも女言葉として「行くよ」を「行くニー」と言ったり、「落ちるよ」を「落ちるニー」と言ったりする「~ニー」もよく聞かれる。
浜名湖周辺の方言
日本の方言をを東西に分ける東西方言境界線があり、それは太平洋側の浜名湖と日本海側の糸魚川とを結ぶ線であると言われているおり、事実浜名湖を挟んで東側と西側で方言は大きく変化する。湖西市は浜松市と隣り合う地域ではあるが、その方言は愛知県の豊橋や三河地方のものに近い。たとえば浜名湖東岸で「居る」は「イル」と言うのに対し西岸の湖西市では「オル」と言うようになる。
浜名湖南岸の方言がこれほどまでにはっきり分かれているのは、1498(明応7)年の地震によって浜名湖の今切ができ、東西往還の道が断絶し、その後も西岸に関所が置かれるなど、東西間での交流が極めて少なかったことが要因のひとつと思われる。
浜名湖北岸では旧三ヶ日町と旧細江町の間に境界線が引かれ、旧三ヶ日町では湖西市と似た方言が使われるのに対し、旧細江町や旧引佐町では浜名湖東岸とほぼ同様の方言が使われている。しかし、その方言の差は浜名湖南岸ほど顕著ではなく、西側の方言が旧細江町まで使われていたり、東側の方言が旧三ヶ日町で使われていたりする。
北遠の方言
北遠の山間部の方言は、地形や山間の習慣に関するものだけでなく、一般的な自然現象や動植物に対する方言も数多く、天竜川下流の平野部ではあまり聞かれないような独自の珍しい単語が多い。また、市内天竜区水窪や佐久間地域の方言は隣接する長野県南部や愛知県北東部と近いといわれる。
山村地域で使われる「歌った」を「歌っツ」と言ったり、「咲いた」を「咲いツ」と言ったりする「~ツ」という方言は、文語文法の完了を意味する助動詞「つ」から由来するものと思われ、全国的にもここにしか残っていない。しかし、近年では使う人も少なくなっており、この貴重な方言も消えていってしまうかもしれない。
やらまいか
やらまいかの「~マイカ」は勧誘を意味する静岡県西部地域の方言で、「やろうじゃないか」という遠州人の積極的な気風を表す象徴とされている。浜松では「やらまいか大使」「やらまいか精神」などといったようにキャッチフレーズとして多く使われており、最近では「やら米か」というブランド米も販売されている。ただ、現実にはこの言葉は日常的に多用されているわけではない。
参考
『静岡県の方言』(静岡新聞社)
『しずおか方言風土記』(静岡新聞社)
『浜松地方の方言』
浜松といえば
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