高野谷のキツネこうやたにのきつね
所在地 | 浜松市西区雄踏町(伝承地) |
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内容
今の雄踏町宇布見から北隣の大久保町へ行く途中には山がある。その山の左側の谷は「高野谷」と呼ばれ、昔、そこには悪いキツネが住んでおり、その道を通る村人をだましては、素裸にしていた。時々、裸になった人が夜明けごろにようやくだまされたことに気付き、ふるえながら谷を駈けていく姿が見られた。
ある夜、村の若者の伝助が悪いキツネを捕まえてくると言って、高野谷へと一人で出かけていった。谷の中でキツネが出てくるのを待っていると、雑木の上から猿の鳴く声がしたので見てみると猿がいた。一匹の猿が伝助のすぐ前に下りてくると、続いて二匹、三匹…と下りてきた。猿たちはそこにあった一隻の船を押して運ぼうとし始めたが、小さな猿の力では容易に動かないため、伝助は猿たちに混ざり、船を押した。伝助が船を押すと、船が少しずつ動き出したので、伝助は夢中になって押した。
海岸近くまで来て、もう少しというときに大波が沖から押し寄せてきたので、伝助は服が濡れては大変と、急いで着物を脱いで裸になった。そして、また船を押していると、大波が伝助のところまで押し寄せてきたので、伝助は裸のまま波を切り、両手を上げて波の中を泳いだ。
その頃、東の空が白くなり、夜が明けてくると、一人の農夫が高野谷を通りかかった。そこには素裸で両手を上げてわめいている伝助がいたので、キツネにだまされていると思い、肩をたたき、声をかけた。
正気に戻った伝助は、自分の裸を見回し、家へと急いで駈けて行った。
参考
『ふるさと再発見 遠州の民話』(静岡新聞社)
『遠州伝説集』(遠州タイムス社)
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