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原右膳はらうぜん

誕生地 長野県飯田市（信濃国飯田）
生年 1784（天明4）年
没年 1864（元治元）年2月21日

 

原右膳とは

原右膳は、江戸時代の水窪町の医師、教育者。医業のかたわら寺子屋を開き、のちに政治・経済・産業に活躍する人材を育てた水窪町の恩人。

 

生涯

1784（天明4）年、信濃国飯田（現：長野県飯田市）で生まれる。幼名を原順吾という。

原家は京都が出自の医者の家系であり、医師の父と母とともに家族で飯田から遠江国周智郡領家村水久保（現：天竜区水窪町）に移り住み、医師として開業する。
1837（天保8）年、世界初の全身麻酔手術を成功したことで名声のあった華岡青洲の師である吉益南涯の古方医学の名家・吉益家の門弟となる。
1842（天保12）年１月23日、紀伊（現：和歌山県）にある華岡青洲の病院兼医学校「春林軒」に入門し、華岡青洲の子・華岡鷺洲の弟子となり華岡流外科医術を修得し、水窪町にもどる。
当時の先端医術を学び、病人救済にあたる一方で寺子屋を開き、没するまで殆ど50年間子弟の教養に努め、その門に学ぶ者は相当な数であった。知行合一の教育が大きくみのり、政治経済産業など各方面に活躍する人材が育ち、いまの水窪町の姿をつくり出すもととなった恩人である。
1864（元治元）年2月21日、右膳は当時としては長寿を全うし、80歳の生涯を遂げた。没後、寺子達が大原に筆子塚を建て、師の業績をたたえた。

子の原玄春（原槐山）、孫の原貞齋（原晩翠）、曾孫の原祐太郎と原正雄らが昭和まで代々、水窪町の医家を継いだ。また、原貞齋の代からは現・浜松市中区においても医業を営み、医師に育てた養子を右膳の玄孫・原とよの婿養子にして北海道にて開業した。

 

人となり

右膳は寺子達の教育に、謝礼のことなど少しも考えず、ひたすら奉仕の念をつらぬいた。寺子達の中には礼金を作物などで納める者、右膳の家の手伝いで埋め合わせる者もいた。それもできない貧しい寺子にも、決してわけへだてをするようなことはなく、食事や衣服を与えたりした。右膳自身の生活は極めて質素であった。右膳の人柄は、寺子達との間に学問ばかりでなく人間的なつながりを深め、社会に出たあとも右膳をたずねて教えを受けた。寺子達はその徳を慕って右膳の筆子塚を建て、現在でも大原の地にその墓があり、往時の右膳の人柄をうかがい知ることができる。

 

参考

『ひとすじの道　郷土の発展につくした人々』（水窪町教育委員会）

『水窪町史　上』・『水窪町史　下』（水窪町史編さん委員会）

『郷土の発展につくした人々』（静岡県教育委員会）

『静岡県の医史と医家伝』（土屋重朗）

『静岡県姓氏家系大辞典』（静岡県姓氏家系大辞典編纂委員会）

『静岡県歴史人物事典』（静岡新聞社出版局）

『吉益家門人録（四）』（町泉寿郎）

『華岡青洲』（那賀町華岡青洲をたたえる会）

『華岡青洲及其外科』（呉秀三）

『華岡青洲先生門人姓名録　全』（錦織玄道）

『華岡青洲先生春林軒門人録』

『華岡家所蔵　門人録』

『華岡門人録』

『華岡氏門人姓名録』

『華岡塾中姓名録』

『華岡鹿城末裔所蔵　華岡門人録』（梶谷光弘）

 

 

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[2021年8月5日掲載]