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たらいに乗った美女たらいにのったびじょ

所在地 浜松市天竜区水窪町(伝承地)
内容

昔、水窪の村に絵から抜け出したような美しさの「おたか」という女がいた。大工の男を婿にもらい、仲睦まじく暮らしていた。

 

ある年の秋、降り続く大雨で水窪川は大洪水となっていた。おたかは雨のせいでたまった洗濯ものを片付けに、濁流のほとりへとたらいを抱えて下りていこうとした。夫は危ないと引き止めたが、おたかは大丈夫と川岸に立ち、しばらくの間、濁流を眺めていた。

 

すると、おたかは何かに取り付かれたかのように一糸まとわぬ姿となってたらいに乗り、濁流に浮かんで流れていってしまった。濁流に流されるおたかを見て、夫を初め、村人は大騒ぎしたが、おたかはうれしそうに流され、そして濁流の彼方に消えていった。
おたかの子供は母親を失ったことに泣き続け、ついには目が見えなくなってしまった。

 

ある夜、夫の大工の夢におたかが現れ、今は大蛇となって下流の鳴瀬の渕に住んでいるから鏡を持ってきてほしいと夫におたかは伝えた。

 

次の日、鏡を持ち、目の見えない子供を連れて鳴瀬の渕へと行くと、美しい昔のままのおたかが現れた。おたかは渕の水で目の見えない子供の目を洗ってあげると、不思議と目が見えるようになった。

 

夫はおたかに帰ってきて欲しいと願うが、受け入れられず、あきらめるために大蛇になった姿を見せて欲しいと頼んだ。おたかの大蛇となった姿を見た夫は顔色を変え、逃げて帰ってしまった。

 

参考

『ふるさと再発見 遠州の民話』(静岡新聞社)
『遠州伝説集』(遠州タイムス社)
 

 

 

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